アクティブラーニングを促進する新センターで、明るい未来へ

投稿日: | ホスピタリティ

Sir Horace Kadoorie Youth Development Centreについて

Sir Horace Kadoorie Hospitality and Mentoring Programme(SHKHMP)は、Michael Kadoorie卿とKadoorie夫人の支援により2015年にスタートしました。中国の農村部では多くの若者が貧困や不利な状況、社会的孤立に直面しています。Shanghai K Charitable Foundationの名誉会長であるPaul Tchen氏は、このプログラムの目的はシンプルなものであり、「不利な立場にある若者が手に職を付けられるよう自信とスキルを身につけさせ、自立できるようキャリアの基盤を築き、将来、個人的に貧困に陥る可能性を排除すること」と話します。これは、Kadoorie家がかつて住んでいた上海に恩を返そうとするひとつの方法でした。

若者たちは18か月の間、センターでホスピタリティ産業の職業訓練、指導、英語、コミュニケーション、生活のスキルなどを網羅した変容を促す総合的なプログラムに取り組み、その後6か月間の一流ホテルやレストランでの実習を経て新しいスタートを切ることになります。

最初の4年間は、職業訓練に必要な業務用厨房がないスペースでプログラムを実施していました。そのため、プログラム参加者は毎日何時間もかけて遠隔地へ移動しなければなりませんでした。また、当初は食事施設もなかったため、第三者の「社員食堂」に委託して食事を提供していたのです。

Shanghai K Charitable Foundationのほか、業界をリードする製品を寄贈したSteelcaseおよび PolyVision、無償でサービスを提供した上海の大手デザイン会社iDA Workplaceなど、専門家パートナーとのコラボレーションを通じ、このプログラムは2019年、学習と社会的スキルを総合的に育むようカスタムデザインされた、より広くなったトレーニングと居住施設に移転しました。

プロジェクトのデザインブリーフ

「私たちは、学習と生活の両方に調和する空間をデザインしたいと考えていました。これには、個人に必要なプライベートな空間と若者同士が交流できる空間を提供するような、より細かく分けたり、つなげて利用したりできる柔軟な多目的スペースが含まれます。」

Simon Wu
iDAプリンシパルアーキテクト

エグゼクティブディレクター兼プログラム代表のShelley Pengは、参加する若者たちはプログラムの生活に適応するために多くの困難に直面すると言います。たとえば、中国の異なる地域から来た人々と一緒の生活や仕事場への適応、新しい規則や規律の受け入れのほか、良い学習習慣づくり、家族から離れて新しい生活のスキルを身につけることなどです。そこで、こうした移行をスムーズにするためのデザインが求められました。

「カジュアルな環境はより親しみやすく、威圧感を与えないので、従来の学習施設の形式ばった部分が少なくなり、スタッフが若者とよりつながりやすくなります。」

Paul Tchen
Shanghai K Charitable Foundation名誉会長

ビジョンの実現方法

新しいセンターは2階建てで、1階部分は専用の調理職業訓練センターとなっており、144人の入居者に食事を提供する新しいメインキッチンと食堂を備えています。また、教室は簡単に構成を変更することができます。

「このセンターの全体的なデザインは、ウォールパーティションと完全可動式の設備により、いくつもの用途に使用できる優れた柔軟性を備えています。つまり、センターの厨房を除くスペースはすべて、目的に合わせた使用が可能です。」とTchenは話します。

最先端の学校用家具、カジュアルなラウンジやカフェ用のさまざまな設備など、 Steelcaseが提供した調度品は移動が簡単で、メンターや若者たちは、少人数の学習グループや大規模なプロジェクトグループ、1対1の会話など、スペースの使い方や適応の方法を柔軟にコントロールできます。

分科会やコラボレーションのためのスペースが施設全体に点在し、即座につながりやすいデザインです。また、明るく鮮やかな配色と十分な自然光が、温かく心地良い雰囲気を醸し出しています。

教室と共有スペースには、PolyvisionのCeramicSteelマグネット式ホワイトボードが設置されています。この床から天井までの「コラージュ」式筆記キャンバスは、授業中やセンター周辺で文書の掲示やメモ書きに使うことができ、生徒が学びに対する当事者意識を持つようサポートしています。

Polyvisionのセールスマネージャー、Matthew Clarkeは、「ホワイトボードを使えば、アイデアを記録したり知識を伝達したり、並べて目に見える形で比較することができます。これにより、より早く効果的に共通の理解を促すことが可能となります。」と話します。

2階は、若者やスタッフ、メンターの居住空間です。寮のほか、毎日のエクササイズクラス用のジムやスタジオルームを備えたフィットネスセンター、共有のソーシャルスペースがあります。1階と2階をつなぐオープンな階段は楽しいソーシャルラウンジに生まれ変わり、シアターとして利用できるようにプロジェクターが設置されました。

寮に関しては、Wuはカプセルホテルのコンセプトからヒントを得て、若者たち一人ひとりにそこそこプライベートな空間を提供するデザインを考えました。「ベッドルーム」には立つことができる十分な高さと、衣類や靴を収納するスペースがあり、持ち物の整理整頓を習慣化できるように配慮されています。

「『カプセル寮』をつくることで、それまでに持てなかったかもしれない自分用のスペースや帰属意識を提供し、若者たちに、自分は尊重されていると感じてほしいのです。」とWuは言います。

生徒の体験

プログラムの最初の2回は旧センターで実施され、大きな成功を収めました。シェフになるという子供の頃からの夢を実現し、現在グランドハイアット上海に勤務するNick Shangや、Kadoorieプログラムのおかげで英会話の能力がアップし、自信がついたというKarry Chenなどがその卒業生です。Karryはそこでの時間がとても楽しかったので、経験と知識を積んだ後、メンターとしてこのプログラムに戻りたいと考えています。

しかし、2人は上海で勉強するにあたり、異なる食べ物や天候、都会生活、そして故郷とはまったく違う生活のペースなど、克服しなければならない課題もあったと話します。

Paul Tchenによれば、新センターで学ぶ最初のグループは、適応しやすく、より早く絆を深めることができると感じています。

「人を惹きつけるこの新しいセンターの環境は、参加する若者たちに安心感を与えるのに役立っています。この非常に望ましい生活環境と学習環境により、中退の可能性が低くなり、若者たちは学ぶことと青春を楽しむことに集中できます。」と彼は言います。「またメンターは、この新しいセンターのおかげで、若者一人ひとりにより特化した学習体験を提供することに集中できるようになりました。」

「私たちは互いに協力し、21世紀のアクティブラーニングのコンセプトを空間のデザインと建築に組み込みました。これにより、生徒たちは何の障害も障壁もなく、自分の能力を最大限に発揮することができます。」

Ambroise D’Hauteville
Steelcaseアジア太平洋地域 教育担当ディレクター

コラボレーションとプロジェクトの功績

Steelcaseアジア太平洋地域で教育担当ディレクターを務めるAmbroise D'Hautevilleは、このプロジェクトがSHKHMPと長期的なパートナーシップを確立し、このインスピレーションに満ちた素晴らしい活動を支援するだけでなく、iDA Workplaceのような同様にインパクトのある活動に取り組むパートナーとSteelcaseの教育におけるDNAを共有する意義深い機会だったと話します。

そして、このプロジェクトが残したものは、単に魅力的な学習環境以上のものだとTchenは言います。

「若者が貧困から抜け出し、自立して自分の人生をコントロールできるようにするとともに、地域社会を常に気遣う価値観を身に付けさせ、幸せで尊厳ある人生を送る機会を与えることで、若者たちの人生を前向きなものに変える力になることを願っています。」

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